交通事故の基礎知識

交通事故に関する法律から自動車の知識まで、交通事故にあってしまったら知っておきたいことを弁護士が分かりやすく説明します!

分野別の目次は、こちらの【コラム目次】をご覧ください

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【自賠責保険の請求】支払うべき金額と、適切な手続き方法とは?

自動車をお持ちの方は、自賠責保険という言葉を聞いたことがあると思いますが、自賠責保険とはどういうものか、どんな場合に自賠責保険の保険金が支払われるのか、いくら支払われるのか、そんなことについては意外と知られていないのではないかと思います。

そこで、交通事故被害にあったら知っておきたい自賠責保険の基本的知識について説明します。

 

1 自賠責保険とは?

自賠責保険は、正式には自動車損害賠償責任保険といいます。

自賠責保険は、交通事故被害者の生命身体の損害を補償する目的でつくられたもので、自動車損害賠償補償法という法律によってその内容が定められています。

 

2 自賠責保険の特徴

① 強制加入保険

 自賠責保険は、交通事故被害者の保護のために、軍用車両や公道を走らない車両を除き加入が義務付けられています。

 自動車と、250ccの自動二輪車は公道を走るには車検が必要ですが、自賠責保険に加入していないと車検が受けられないため、これらの車両の場合は、通常は自賠責保険に入っています。

 しかし、原動機付き自転車(原付)などの250cc以下の車両では車検を受ける必要がないため、自賠責が切れていることがあり、自賠責が使えない場合があります。

 では、このような自賠責が切れていたり、もともと違法車車両で自賠責保険に加入していない車両が加害車両の場合に被害者は泣き寝入りなのかというと、そうではありません。

 そのような場合の対策として、政府保障事業というものがあり、政府が自賠責保険とほぼ同様の基準で被害者に金銭が支払われます。

 政府保障事業については、国土交通省が詳しい解説をしているので、こちらの政府保障事業の説明のページをご覧ください。

 

② 事実上免責事由がない

 任意保険では、加害者の故意による事故や天変地異などの場合に保険会社は保険金を支払わなくてよいことになっています。

 しかし、自賠責保険の場合は、被害者保護の観点から、①加害者の悪意による事故の場合、②重複契約の場合の2つに免責事由が限定されています。

 しかも、①加害者の悪意による事故の場合には、加害者が保険会社に支払いを請求出来ないだけで、被害者が保険会社に請求することはできるので、被害者が保険金の支払いを受けられないということはありません。

 ②については、二重取りができないだけですので問題となることはないでしょう。

 

③ 保険金が支払われるのは人身損害のみ

 自賠責保険は、被害者の生命身体の損害を保証しようとするものですから、保険金が支払われるのは生命身体に損害が生じた場合のみとなり、壊れた車など物的損害については保障されません。

 

④ 支払われる金額の上限が法律で決まっている

 交通事故の損害賠償は、被害者に生じた損害に応じて加害者が支払わなければならないもので、本来は上限などないはずですが、自賠責保険は、最低限度を保障するものであり、支払いの上限額が決められてます。

 具体的な上限金額は、後述の「3 支払われる金額の上限は?」の項目で説明します。

 

⑤ 仮渡金

 損害賠償を請求するには、通常は損害がいくらかが確定させる必要があります。

 しかし、現実にはお金がなくて日々の治療費にも困るということがあります。

 そのような場合のために、当面の出費のために仮渡金という名目で損害賠償の一部を請求することができます。

 この仮渡し金の金額も法律で決まっていますが、詳しくは以下の「3 支払われる金額の上限は?」で説明します。

 仮渡金は、損害賠償の一部を先に支払うものですから、最終的な支払い金額から仮渡金の金額が差引かれますし、万が一損害全額より仮渡し金が多い場合は、もらいすぎた分について返還する必要があります。

 

⑥ 過失相殺による減額の制限

 自賠責保険は、生命身体に損害を受けた者を保護するという観点から、損害を受けた者に過失がある場合でも、その過失相殺による減額が以下の表のように制限されています。

 ただし、損害額が20万円以下の場合には、全く減額されません。 

本来の過失割合

後遺障害・死亡の場合における

自賠責保険の減額割合

傷害の場合における

自賠責保険の減額割合

0%~69% 0% 0%
70%~79% 20% 20%
80%~89% 30% 20%
90%~100% 50% 20%

 以上のように減額割合が修正される関係上、任意保険よりも自賠責保険を先に請求した方が良い場合があります。

 

3 支払われる金額の上限は?

① 自賠責保険の金額の上限

死亡の場合 3000万円
死亡するまでに傷害で治療等を受けた場合 上記と別途120万円
傷害を負った場合 120万円

 

② 仮渡金の金額の上限

死亡の場合 290万円

以下の傷害の場合

・脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有するもの

・上腕又は前腕の骨折で合併症を有するもの

・大腿又は下腿の骨折

・内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの

・14日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30万円以上のもの

40万円

以下の傷害の場合(上記を除く)

・脊柱の骨折

・上腕又は前腕の骨折

・内臓の破裂

・病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの

・14日以上病院に入院することを要する傷害

20万円
11日以上医師の治療を要する傷害を受けたもの 5万円

 

4 請求手続きは?

 自賠責保険は、加害者が負担する損害賠償金を填補するものなので、原則的には加害者が被害者に支払ったあとに加害者が保険会社に支払うことになりますが、それでは加害者が不誠実な場合などに被害者の救済が図れないので、被害者から保険会社に請求することもできます。

 自賠責保険金の支払い請求の概要は以下のようになります。

① 必要書類の収集

 保険会社には、自賠責保険金請求のための書類があるので、保険会社に必要書類一式を請求します。

 保険会社から送られてくる書式には、必要書類一覧もついているので、その書類にしたがって必要書類を集めていきます。

 なお、傷害事件の場合は、必要書類の多くは既に保険会社が収集しているので、その写しももらいましょう。

② 自賠責保険会社への請求

 必要書類を集めたら、保険会社に提出します。 

③ 損害調査

 提出された書類は、保険会社から損害保険料率算出機構の調査事務所に送られます。

 調査事務所では、事故の発生状況、自賠責保険金が支払われる事故かどうか、損害額などを調査します。

④ 損害の報告

 調査事務所での調査結果が保険会社へ送られます。

⑤ 保険金の支払い

 保険会社から、調査結果に基づいた金額が支払われます。

弁護士 本田幸則

弁護士 本田幸則

2007年に弁護士登録をし、2014年に「なごみ法律事務所」を設立。 自身が交通事故にあったことをきっかけに、交通事故の被害者側での弁護活動に注力するようになる。