交通事故の基礎知識

交通事故に関する法律から自動車の知識まで、交通事故にあってしまったら知っておきたいことを弁護士が分かりやすく説明します!

分野別の目次は、こちらの【コラム目次】をご覧ください

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急ブレーキ・急発進の時の車の動き

交通事故のうち追突事故では、前の車が急ブレーキを踏んだのかどうか、後ろの車がきちんとブレーキを踏んだのか、ブレーキと間違えてアクセルを踏んでいないかなどが問題になることがあります。

そのときに知っておきたいのが、急ブレーキや急発進をしたときの車の動きです。 

 

1 ブレーキを踏んだ時の車の動き

 

 自動車が前進中にブレーキを踏むと車の本体は慣性力により前に進み続けようとします。

 

 他方、地面に設置しているタイヤは止まろうとするので、車の重心が前方に移ることになります。

 つまり、前の方が沈み込むことになり、反対に車の後ろは上に持ち上がるということになります(図①)。

 この現象をノーズダイブといいます。

 具体的にどの程度前が沈み込むかは、車の重さや、走行速度、ブレーキがどの程度急だったのか、ショックアブソーバーの硬さなどによるため、メーカーや自研センターなどの研究機関の結果などから判断します。

 

 このことから、前の車が急ブレーキを踏んだために後ろの車が追突した場合には、前の車の後部が上に持ち上がった状態で後方の車がぶつかるため、静止状態でぶつかった場合より、前の車のやや下の方に傷がつくということになります。

 後方の車がブレーキを踏んでいなかったのではないかが争いになった場合には、後方の車がブレーキを踏んでいれば、後方の車の前部が下に下がった状態で前の車にぶつかるので、上記と同様に静止状態でぶつかった場合より、前の車のやや下の方に傷がつくということになります。

2 急発進の時の車の動き

 急発進した場合の車の動きは、急ブレーキと逆になります。

 タイヤは前に進もうとしますが、車体は慣性力によりその場にとどまろうとするため、重心が後方に移ることになり、自動車の前部が持ち上がり、後部が下がるということになります(図2)

 これをスクウォート(スクワット)といいます(①との対比でいえばノーズリフトといいたくなりますが、ノーズリフトは整形用語です)。

   

 このことから、後ろの車がアクセルとブレーキを間違えて追突したような場合には、静止状態で衝突した場合と比べて、前の車の傷は上の方につくことになります。

3 前の車も後ろの車も急ブレーキを踏んだ時

 急ブレーキを踏んだ時の車の動きは①のとおりです。

 そうすると、前を走っている車の後部は急ブレーキにより持ち上がった状態となり、後ろの車の前は沈み込んだ状態となるため、後ろの車のみが急ブレーキを踏んだ場合よりも、前の車の後部のさらに下の方に傷がつくということになります。

 では、両方が急ブレーキだったのか、前の車が静止状態のところへ後ろの車のブレーキが間に合わずに追突したのかの違いはどう判断するかというと、車種や走行速度によって沈み込み具合が異なるため、争いになった場合には専門家の意見を聞きながら判断することになります。

4 急ブレーキを踏んで停止した直後の車の動き

 滅多にないことですが、前の車が急ブレーキを踏んで停止した直後に後ろの車が追突してくることがあります。

 このときに、急ブレーキ後に停車した直後の車の動きが問題となることがあります。

 この場合、①のとおり急ブレーキを踏んだ自動車の前は沈み込むことになります。

 そうすると、フロントのショックアブソーバーのバネが縮むことになります(これをバンプといいます)。

 バネは、縮めると延びようとします(リバンプ)から、急ブレーキによって停車すると、今度は反動で自動車の前が持ち上がり、後ろが沈み込むことになります(図③)。

   

弁護士 本田幸則

弁護士 本田幸則

2007年に弁護士登録をし、2014年に「なごみ法律事務所」を設立。 自身が交通事故にあったことをきっかけに、交通事故の被害者側での弁護活動に注力するようになる。