交通事故の基礎知識

交通事故に関する法律から自動車の知識まで、交通事故にあってしまったら知っておきたいことを弁護士が分かりやすく説明します!

分野別の目次は、こちらの【コラム目次】をご覧ください

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交差点で右折車を右から追い越そうとして衝突した場合の過失割合

前を走っていた自動車が交差点で右折しようとしたところ、後続車両が前の車を右から追い越そうとして前の車両に衝突した場合の過失割合はどうなるでしょうか?

この場合の過失割合は、原則として右折車両の過失割合はゼロとなります。

ところが、相手方保険会社から「50:50だ、それが判例だ」と主張されたことがあります。
だまされないでください。
場合によっては50:50となることもありますが、原則は右折車0:後続車100です。

なぜ上記の保険会社のような考え方になるのか、詳しく見てみましょう。

【目次】
1 保険会社の主張の根拠は判例タイムズ?

2 原則の過失割合の考え方

3 右折の手順に不備がある場合の過失割合は?

4 優先道路の再修正

5 関連する法律

 

1 保険会社の主張の根拠は判例タイムズ?


「別冊判例タイムズ38」という本がありますが、この本は東京地方裁判所の交通事故を専門に扱う部署の裁判官が代表的な事故態様の過失割合をまとめたものです。

保険会社から提案される不思議な過失割合は、この本の読み間違いによります。

実際、上記の50:50という過失割合を主張した保険会社に根拠は何かたずねると、別冊判例タイムズ38の【136】の図だということでした。

しかし、その図の注釈を読むと、その図は、優先道路において、右折車が適切に方向指示器を出していなかったり、中央線によっていなかったりする場合の例外的な規定だということが分かります。

 

2 原則の過失割合の考え方


前を走る車の右折と、後続車両の直進の優先関係については、道路交通法26条の2第2項と34条6項に、以下の趣旨の規定があります。

*右折車が進路を変更する際に、後続車の速度又は方向を急に変更させることになるおそれがあるときは、後続車両が優先し、そうでないときは適法な合図をした右折車が優先する。

つまり、道路交通法に定める手順をきちんとふんで右折している場合には、右折車が優先するということになり、これを無理に追い抜こうとした後続直進車は違法な行為をしているということになります。

ですから、原則は、右折車0:後続車100となるのです。

 

では、例外的に右折車の過失が認められる場合とはどんな場合かですが、それは道路交通法に定める手順に従った右折をしていない場合ということになります。

具体的な右折方法については道路交通法53条1項、2項、道路交通法施行令21条に以下の趣旨の規定があります。

*交差点の手前30mの地点から右折の合図をしたうえ、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、かつ、交差点の中心の直近の内側を徐行しなければならない。

この手順に反する場合には右折車にも過失が認められます。

 

3 右折の手順に不備がある場合の過失割合は?

右折の際に、上記の道路交通法の手順に踏まずに曲がってしまった場合の過失割合はどうなるのでしょうか?

この点については、別冊判例タイムズ38の【135】が定めており、原則として右折車10:後続車90となります。

もっとも、【135】の修正要素として、「あらかじめ中央に寄らない右折」の場合に、さらに右折車に10~20%の過失が加算されるとの記載があることからすれば、【135】が想定しているのは、方向指示器の出し遅れのケースだと思われます。

なお、右折車の右側が大きく空いており、後続直進車が中央線をはみ出さずに追い越したような場合には、もはや別類型の事故として扱われます。

その他、10:90を原則としつつ、以下の要素で修正されます。

・後続車の20km/h以上の速度違反→後続車に+10%

・後続車の著しい過失→後続車に+5%

・後続車の重過失→後続車に+10%

・右折車の著しい過失→後続車に-10%

・右折車の重過失→後続車に-20%

 

4 優先道路の再修正

 

センターラインが交差点の中まで書いてある道路や優先道路である旨の標識がある道路での事故においては、上記の修正がさらに修正されることがあります。

優先道路においては、交差点内においても追い越しが禁止されていないからです。

もっとも、優先道路においても道路交通法28条2項が適用されます。

つまり、前を走っている車両が中央線または道路右端を走っている場合は、右側から追い越してはならないという規定が適用されるので、優先道路における再修正は、右折車が右折のために右側に寄っていない場合にのみ適用されることになります。

では、優先道路を走っており、かつ、右折車があらかじめ右に寄っていなかった場合の過失割合はどうなるかですが、この場合は、50:50になります。
これを基準にさらに以下の要素で修正されます。

・後続車両の20km/h以上の速度違反→後続車に+10%

・後続車両の著しい過失→後続車に+10%

・後続車両の重過失→後続車に+20%

・右折車両の合図なし→後続車両に-10%

・右折車両の著しい過失→後続車両に-10%

・右折車両の重過失→後続車両に-20%

 

 

5 関連する法律

 

道路交通法53条

1 車両(自転車以外の軽車両を除く。次項及び第四項において同じ。)の運転者は、左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。
2 車両の運転者は、環状交差点においては、前項の規定にかかわらず、当該環状交差点を出るとき、又は当該環状交差点において徐行し、停止し、若しくは後退するときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。
3 前二項の合図を行う時期及び合図の方法について必要な事項は、政令で定める。
4 車両の運転者は、第一項又は第二項に規定する行為を終わつたときは、当該合図をやめなければならないものとし、また、これらの規定に規定する合図に係る行為をしないのにかかわらず、当該合図をしてはならない。

 

道路交通法施行令21条(抜粋)

合図を行う場合 合図を行う時期 合図の方法
右折し、又は転回するとき。 その行為をしようとする地点(交差点において右折する場合にあつては、当該交差点の手前の側端)から三十メートル手前の地点に達したとき。 右腕を車体の右側の外に出して水平に伸ばし、若しくは左腕を車体の左側の外に出して肘を垂直に上に曲げること、又は右側の方向指示器を操作すること。

道路交通法28条

1 車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
2 車両は、他の車両を追い越そうとする場合において、前車が第二十五条第二項又は第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央又は右側端に寄つて通行しているときは、前項の規定にかかわらず、その左側を通行しなければならない。
3 車両は、路面電車を追い越そうとするときは、当該車両が追いついた路面電車の左側を通行しなければならない。ただし、軌道が道路の左側端に寄つて設けられているときは、この限りでない。
4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)は、反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分に注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

弁護士 本田幸則

弁護士 本田幸則

2007年に弁護士登録をし、2014年に「なごみ法律事務所」を設立。 自身が交通事故にあったことをきっかけに、交通事故の被害者側での弁護活動に注力するようになる。