交通事故の基礎知識

交通事故に関する法律から自動車の知識まで、交通事故にあってしまったら知っておきたいことを弁護士が分かりやすく説明します!

分野別の目次は、こちらの【コラム目次】をご覧ください

Original

交通事故で損害賠償金が発生すると“税金”はどれくらいかかるのか?

交通事故の損害賠償をもらったのはいいけれど、これって税金かからないの?
そんな質問をされることがあります。

結論から申し上げると、原則として交通事故の損害賠償金に税金はかかりませんが、会社や個人事業主などの場合は一部例外があります。

もう少し詳しく説明します。

 

1 なぜ原則として交通事故の損害賠償金に税金がかからないのか?


原則として交通事故の損害賠償金に税金はかからないのですが、そのようになっている理由は何だと思いますか?


原則として損害賠償金は、事故によるマイナス部分を穴埋めするものだからです。


たとえば損害賠償のうち慰謝料について考えてみましょう。
交通事故にあってケガをすると痛い思いをします。また、ケガの内容によっては日常生活に影響がありストレスを感じます。
つまり、精神的マイナスがあります。


慰謝料とは、この精神的マイナスをお金で穴埋めをするためのものです。


そう考えると、被害者は、慰謝料をもらってもプラスはない=所得はないということになります。
所得がないのですから、所得税はかかりません。
また、加害者がマイナスを生じさせた部分を穴埋めするだけですから、新たに何かを贈与した(あげた)とはいえず、贈与税もかかりません。


これが、交通事故の損害賠償金には原則として税金がかからない理由です。


この考え方をもとに、所得税法などで損害項目ごとに具体的に定められているので説明します。

 

2 各損害項目ごとの具体的取扱い

⑴ 慰謝料


慰謝料とは、上でも少し書きましたが、精神的苦痛をお金で穴埋めしようとするものですから税金はかかりません。


法律では、所得税法9条1項に「次に掲げる所得については、所得税を課さない。」と定められており、その17番目(17号)に「心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するもの」と記載されています。


なお、所得税法施行令30条で、所得税法9条1項17号について、さらに詳細に定められています。 

 

⑵ 治療関係費


治療費も、身体に受けたマイナスを元に戻すためのもので、プラスはありませんから税金はかかりません。


法律上の根拠は、慰謝料と同じ所得税法9条1項17号です。


なお、治療費を加害者に出してもらっているわけですから、確定申告の際に支払った治療費のうち加害者から補填された金額については医療費控除の対象とすることはできません(所得税法73条参照)。

 

⑶ 逸失利益


逸失利益とは、得られたはずの収入が得られなかったという損害です。
これも、本来得られたはずの収入が、ケガなどによって得られなくなったことを穴埋めするものですから、税金はかかりません。


法律上の根拠は、こちらも所得税法9条1項17号です。

 

⑷ 見舞金・香典・葬祭費


所得税基本通達9-23により、社会的に見て相当な金額の見舞金・香典・葬祭料には税金はかからないものとされています。


どれくらいの金額が社会的に見て相当な金額かですが、これについては時代や経済情勢によって貨幣価値は変わりますし、地域や社会的地位によっても変わってくるでしょうから、具体的に判断せざるを得ません。
ただ、よほどの高額でなければ収入として認定されることはないでしょう。
 

 

⑸ 財産上の損害


財産上の損害についても、実際に受けた損害を穴埋めするものについては税金はかかりません。


ですから、会社員や公務員の場合は税金はかからないと思っていいでしょう。


会社や個人事業主の場合については、例外的に損害の穴埋めといえないケースがあり、その場合には税金がかかることがあります。


法律では、所得税法施行令94条、所得税基本通達9-19に書かれています。


例外1:破損した商品を賠償してもらった場合
事故によって商品がダメになり、その商品代金を弁償してもらったような場合は、実質的には、その商品が売れたのと同じ状態になるので、収入があったものとして扱われます。


例外2:車が店舗に飛び込んできたような場合で、代わりの仮店舗を借りるときに、仮店舗の賃料相当額の損害賠償金を受け取った場合には、仮店舗の賃料は経費として処理され、仮店舗賃料相当額の賠償金は収入として扱われます


例外3:事業用の車を廃車にしたような場合で、その車を損失として会計処理した場合には、車の賠償金を非課税とすると二重に利益を受けることになるので、損失額から賠償額を差引く必要があります。

 

 

3 被害者本人以外が損害賠償を受け取る場合

 

⑴ 被害者が亡くなった場合


被害者が交通事故により亡くなった場合、相続人が死亡慰謝料などの損害賠償を請求することになりますが、この場合は、損害賠償の請求権がある者が請求しているだけですから、本人が損害賠償を受け取る場合と同様に考えられます。


なお、被害者本人が交通事故をきっかけに損害賠償を受取り、その後に交通事故時のケガが原因で死亡したような場合は、単に相続があっただけですから、相続税がかかります。 

 

⑵ 親族固有の慰謝料


民法711条は、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」として、被害者が亡くなった場合には親族固有の慰謝料を認めています(近親者慰謝料といいます)。


さらに判例で、死亡するに等しいくらいのケガを負ったときにも認められるとされています。


また、祖父母が孫を育てていた場合のように実質的には父母と同じような立場にある場合も認められるとされています。


このような親族固有の慰謝料についても税金はかかりません。


根拠は、所得税基本通達9-20が「その支払を受ける者と身体に傷害を受けた者とが異なる場合であっても、その支払を受ける者がその身体に傷害を受けた者の配偶者若しくは直系血族又は生計を一にするその他の親族であるときは、当該保険金又は給付金についても同号の規定の適用があるものとする」としているためです。

 

4 まよったら税務署で確認を


平成29年4月時点での取扱いは以上のとおりですし、そもそもの考え方からすれば大きく変わることはないと思われます。

しかし、法改正や解釈上の問題で取扱いが変わってくることもありますので、最終確認は税務署で行っていただくようお願いします。

弁護士 本田幸則

弁護士 本田幸則

2007年に弁護士登録をし、2014年に「なごみ法律事務所」を設立。 自身が交通事故にあったことをきっかけに、交通事故の被害者側での弁護活動に注力するようになる。