交通事故の基礎知識

交通事故に関する法律から自動車の知識まで、交通事故にあってしまったら知っておきたいことを弁護士が分かりやすく説明します!

分野別の目次は、こちらの【コラム目次】をご覧ください

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車を道路に出そうとしたら、道路上の直進車と衝突した場合の過失割合

駐車場や、ガソリンスタンドなどから、道路に出ようとしたときに、あやまって道路上を走っている車と衝突してしまうという事故があります。

この場合の道路への侵入車両と道路上の直進車両との過失割合は、原則として80:20とされます。

 

1 基本的な考え方

道路外から道路に車で侵入しようとするときに法律上課される義務については、道路交通法25条の2第1項に規定されています。

 

道路交通法25条の2第1項

車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。

 

要するに、道路上の車や歩行者の邪魔にならないように侵入しなさいということですね。

 

さらに、この義務に違反した場合には、3月以下の懲役または5万円以下の罰金という罰則も規定されています(道路交通法119条1項2号の2)。

 

ですから、原則としては、道路に侵入しようとする車両のほうが悪いということになります。

 

もっとも、通常は、道路に侵入しようとする際は、ウインカーを出して道路の様子を見ながらゆっくりと進んでくるので、道路上を走っている車は、「あの車、出てくるかも」と気付けるはずです。

そこで、道路上を走っていた車にも衝突を避けられる可能性があったとして、損害を少しだけ分担しなさいということになります。

その結果、20:80という過失相殺率となります。

 

2 修正要素

以下の事情がある場合には、直進車両に以下の過失割合が加減されることがあります。

 

① 頭出し待機 +10%

道路に侵入しようとする車両が、じりじりと進んで、道路上に少し車のフロント部分が出ているようなケースでは、道路上を進行する車両も、その車が侵入してくる可能性が高いことが分かるので、直進者側に10%程度過失がプラスされます。

 

② 既右折 +10%

道路に侵入しようとする車両が右に行こうとして右折を完了した直後に、侵入車両から見て左側から来た車が衝突した場合には、左側から来た車両には10%程度過失が加算されます。

なぜなら、このようなケースでは、侵入車両は、すでに車線を一つ渡り切って、右折車線へ入っているはずですから、直進車両は、かなり手前から侵入車両が侵入しようとしているのに気付けるからです。

 

③ 直進車のゼブラゾーン走行 +10~20%

ゼブラゾーンは、法律上走行を禁止されているわけではないのですが、一般常識として意味もなく入らないものです。

また、ゼブラゾーンを走っている車両は、本来の走行車線が混んでいるために抜け駆け的に走っていることも多く、その場合には交通秩序を乱す行為といえます。

そのため、ゼブラゾーンを走っている車の事情や、視認性などを考慮のうえで10~20%程度直進車の過失が加算されます

 

④ 直進車の15km/h以上の速度違反 +10%

直進車が高速であるほど事故の確率が上がるからです。

 

⑤ 直進車の30km/h以上の速度違反 +20%

上記と同様です。

 

⑥ 幹線道路  -5%

幹線道路に明確な定義があるわけではありませんが、おおむね片側2車線以上で、車道と歩道の区別が明確な道路をいいます。

このような道路は、交通量が多いので、侵入車両は、より気を付けるべきですし、直進車両は、前の車両については知っていれば大丈夫と思いがちなので、直進車両の過失割合が5%減となります。

 

⑦ 侵入車両の徐行なし -10%

侵入車両が急に出てきたような場合には、直進車は避けづらくなりますから、その分過失が10%減となります。

なお、「徐行」とは、道路交通法2条で、「車両等が直ちに停止することができるような速度」とされていますが、過失割合を考えるときは、ここまで減額ではなく、常識的な程度で低速走行をするということです。

 

⑧ 侵入車両の著しい過失 -10%

もともとの過失割合が、侵入車両に過失があることを前提としていますし、上記のように徐行なしで飛び出した場合は修正要素として考慮されているので、これらの場合以外でひどい過失がある場合です。

たとえば、飲酒運転などがあげられます。

 

⑨ 侵入車両の重過失        -20%

ほとんど故意に近いようなケースです。

 

⑩ 侵入車両がウインカーを出さなかったことは考慮されません。

道路外から道路に侵入しようとしているのに、道路上の直進車両が気付くかどうかと方向指示器を出していたかはどうかは、ほとんど関係がないので考慮されません。

個人的には侵入車両が右折の場合には考慮していい気がしますが。

 

3 他の事故類型との関係での疑問

 

以前、「判例タイムズ【123】は、優先道路とそうではない道路との交差点での事故についての過失割合を、原則として10:90としているが、そのこととの整合性は?」と聞かれたことがあります。

 

優先道路でないほうの道路を走行する車が交差する優先道路に侵入しようとする場合、優先道路を走行する車両の邪魔にならないように侵入しなければならないので、運転者が負う注意義務は、本コラムとほとんど同じです。

そうすると、過失割合は、どちらの事案でも同じくらいになるはずだけれども、判例タイムズでは過失割合が異なります。

 

両者の違いがなぜ生じるのか、少し調べてみましたが分かりませんでした。

 

ただ、交通事故による過失割合は、完全に論理的に解決できるわけではなく、事故状況に法律を当てはめて、慣習や弱者保護的観点から修正して、「これくらいかな」と裁判官が判断するものです。

そして、判例タイムズは、そうやって判断した過去の裁判例を分析して、「一般的には、こういう時はこれくらい」というようにまとめたものですから、中には整合性が取れないものもあるでしょう。

実際、判例タイムズは何度も改訂されており、最初に出された版と現在の版とでは過失割合が異なるものもありますから。

 

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弁護士 本田幸則

弁護士 本田幸則

2007年に弁護士登録をし、2014年に「なごみ法律事務所」を設立。 自身が交通事故にあったことをきっかけに、交通事故の被害者側での弁護活動に注力するようになる。