交通事故の基礎知識

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分野別の目次は、こちらの【コラム目次】をご覧ください

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ライプニッツ係数は民法改正後どうなる?

2017年(平成29年)5月26日、民法改正案が参議院で可決され、数年以内に施行されることになりましたが、その中には利息に関する規定があるため、交通事故の損害額を計算する際に使用するライプニッツ係数にも影響が出てきます。

 

【目次】

1 民法改正でなぜライプニッツ係数がかわるの?

2 新民法での具体的なライプニッツ係数は?

3 いつから新しいライプニッツ係数が適用される?

4 関係する改正民法の条文 

5 (たぶん)世界一分かりやすいエクセルでライプニッツ係数を計算する方法

 

1 民法改正でなぜライプニッツ係数が変わるの?

 

交通事故の損害の一つとして、逸失利益というものがあります。

これは、事故にあわなければ将来得られたお金(給料など)が、事故のせいでもらえなくなったことによる損害のことです。

この逸失利益を計算するには、将来のお金を現在の価値に引き直さなければなりません。

つまり、「1年後の100万円」とつりあう現在の金額は、「100万円-1年分の利息」と考えなければなりません。

では、2年後だと?3年後だと?というのを簡易に計算できるようにしたのがライプニッツ係数です。(*ライプニッツ係数とは?のページもご参照ください)。

具体的には、

収入減少関係の損害賠償額=収入減少額×収入減小期間に対応したライプニッツ係数

で計算されます。

 

上記のとおり、ライプニッツ係数は、将来のお金を現在のお金に引き直して計算するための係数ですが、その係数は、現在の民法の利率年5%を基準にしています(現民法404条)。

ところが、新民法では年3%とされています(新民法404条2項)。

このため、ライプニッツ係数が影響を受けるのです。

なお、新民法では、3年ごとに利率を見直す旨の規定が置かれています(新民法404条3項以下)。

 

2 新民法での具体的なライプニッツ係数は?

上記のとおり、新民法では利率が3年ごとに見直されることになりますが、当面適用される年3%を基準とした場合のライプニッツ係数を表にまとめておきます。

ライプニッツ係数(3%)

年数 ライプニッツ係数 年数 ライプニッツ係数 年数 ライプニッツ係数

0.970873786 21  15.41502414 41  23.41239997

1.913469696 22  15.93691664

42

 23.7013592

2.828611355 23  16.44360839 43  23.98190213
3.717098403

24

 16.93554212 44  24.25427392
4.579707187

25

 17.41314769 45  24.51871254
5.417191444

26

 17.87684242 46  24.77544907
6.230282955

27

 18.32703147 47  25.02470783
7.01969219

28

 18.76410823 48  25.26670664
7.786108922

29

 19.18845459 49  25.50165693
10 8.530202837

30

 19.60044135 50  25.72976401
11 9.252624113

31

 20.00042849 51  25.95122719
12 9.954003994

32

 20.38876553 52  26.16623999
13 10.63495533

33

 20.76579178 53  26.37499028
14 11.29607314

34

 21.13183668 54  26.57766047
15 11.93793509

35

 21.48722007 55  26.77442764
16 12.56110203

36

 21.8322525 56  26.96546373
17 13.16611847

37

 22.16723544 57  27.15093566
18 13.75351308

38

22.49246159 58  27.33100549
19 14.32379911

39

 22.80821513 59  27.50583058
20 14.87747486

40

 23.11477197 60  27.67556367

 

3 いつから新しいライプニッツ係数が適用される?

 上記のようにライプニッツ係数が変わりますが、この新しいライプニッツ係数はいつから適用されるのでしょうか?

この点についても、改正民法は条文を置いており、417条の2第1項で「その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする」としています。

では、「損害賠償の請求権が生じた時点」とはいつかということになりますが、交通事故のような不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為時=事故時に請求権が生じると考えられています。

つまり、事故時が基準時となるといことです。

 

4 関係する改正民法の条文

 民法404条

1 利息を生ずべき再建について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年3パーセントする。

3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を一期とし、次項の規定により変動するものとする。

4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、または減産した割合とする。

5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満の者に限る。)にかかる利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(その割合に0.1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

民法417条の2

1 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。

5 (たぶん)世界値分かりやすいエクセルでライプニッツ係数を計算する方法

上記1で書いたとおり、新しい民法では3年ごとに利息が見直されることになります。

そのため上記の表に当てはまらない方もでてくると思いますので、エクセルを使った(たぶん)世界一簡単な計算方法を図入りでまとめておきます。

 

①まずは、分かりやすいようにA1欄に年数、B1欄にライプニッツ係数(単年)、C1欄にライプニッツ係数(積算)と入力します(図1参照)。

ライプニッツ係数(単年)は、文字通り単年で、たとえば3年後のお金を今受け取った場合にどうなるかです。

ライプニッツ係数(積算)は、損害が複数年に渡る場合に上記の単年計算を合計して計算しますが、それを簡略化したものです。

たとえば、3年間損害が発生し続けた場合には、1年目の損害に対応するライプニッツ係数+2年目の損害に対応するライプニッツ係数+3年目の損害に対応するライプニッツ係数の合計のライプニッツ係数を表します。

 

これらが入力できたら、年数を入れていきましょう(以下、入力は半角で行ってください)。

A2に1を入れます、次にA3に2を入れます。

以降は、A2とA3の両方のセル(マス)を選択し、右下にあらわれる■にマウスの矢印をあわせてクリックし、ズズズーと下にずらせば勝手に入力されます(図1、図2)。

図1

図1

図2

図2

 

次は、ライプニッツ係数(単年)を計算します。

今回は年3%の利息の場合を計算しますが、変更がある場合は以下の「0.03」のところを変更後の数字にしてください。

B2欄で1年後のライプニッツ係数を計算します。

1年後のライプニッツ係数は、年利3%の場合以下の式になるので、B2に入力します(図3)。

=1/(1+0.03)

図3

図3

次は、B3欄で2年目のライプニッツ係数を計算しますが、2年目のライプニッツ係数は、1/(1+0.03)(1+0.03)ですが、これは、1年目のライプニッツ係数を1+0.03で割ったのと同じです。

ですから、B3欄には以下のように入力します(図4)。

=b2/(1+0.03)

図4

図4

入力してENTERを押すと、2年目のライプニッツ係数が計算されます。

次は、計算結果が出ているB3欄を選択し、右下にでてくる■にマウスの矢印をあわせてクリックし、下へズズズーとスライドします(図5,6)。

図5

図5

図6

図6

これだけで、単年度のライプニッツ係数が計算できます。

さらにライプニッツ係数を積算していきましょう。

1年目は単年と同じですから、C2欄にB2欄をコピーしましょう。

B2欄を選択して右クリックし、コピーをクリックします。

次に、C2欄を選択し右クリックし、チェーンマークの貼り付けをします(図7)。

これは、B2が変更された場合にC2も連動して変える貼り付けの仕方です。

図7

図7

次にC3欄ですが、1年目と2年目を積算するわけですから以下のように入力します(図8)。

=c2+b3

図8

図8

あとは、単年計算のときと同じです。

C3欄を選択して、右下にでてくる■にマウスの矢印をあわせてクリックし、ズズズーと下へスライドさせれば自動的に計算されます(図9、10)。

図9

図9

図10

図10

 

 【関連コラム】

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死亡交通事故の被害者が加害者に請求できるもの

弁護士 本田幸則

弁護士 本田幸則

2007年に弁護士登録をし、2014年に「なごみ法律事務所」を設立。 自身が交通事故にあったことをきっかけに、交通事故の被害者側での弁護活動に注力するようになる。