交通事故の基礎知識

交通事故に関する法律から自動車の知識まで、交通事故にあってしまったら知っておきたいことを弁護士が分かりやすく説明します!

分野別の目次は、こちらの【コラム目次】をご覧ください

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交通事故で被害者が死亡した際の「損害賠償請求」と「相続」について

交通事故の被害者が亡くなった場合、被害者が請求するはずだった死亡慰謝料などの損害賠償請求権は相続されることになるため、相続人が加害者に損害賠償を請求することになります。


相続人全員が足並みをそろえて加害者に損害賠償を請求することができればいいですが、相続でもめているような場合は問題となります。


相続でもめているような場合、相続人は、相続について話がまとまる前に自分の分の損害賠償を加害者に請求出来るでしょうか?

 

1 判例


この点、最高裁判所平成29年4月8日判決は、「相続人数人ある場合において、その相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解することを相当とする」としています。
ここでいう「相続分」は法定相続分を意味します。

 

要するに、各相続人が損害賠償請求権のうち自分の法定相続分だけを独自に加害者に請求することができるということになります。


判決中の「可分債権」という言葉は耳慣れないかもしれませんが、文字通り分けることができる債権で、債権とは、ある人が他の人に請求出来る権利です。

 

たとえば、AさんがBさんにお金を1万円貸していたとします。
Aさんが亡くなって、子ども2人がAさんの相続人だったとします。
AさんはBさんに1万円を返せという権利(債権)を持っていました。
1万円返せという権利は、5000円を返せという権利が2個あるとも考えられます。


このように分けられる権利が可分債権です。

 

そして、損害賠償請求権もお金を請求するわけですから、人数に応じて金額を分けることができるため可分債権にあたります。

 2 なぜ各相続人が自分の分だけを請求できるのか?

なぜ各相続人が、自分の相続割合に応じた損害賠償請求権を独自に請求できるのかというと、民法427条が根拠となります。


民法427条は「数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。」と定めています。

 

要するに、債権者(請求する側)が複数いる場合は、その人数で分けるのが原則ですよということです。

 

この条文から、分けられる権利は原則として被害者が亡くなった瞬間に相続人に当然に分割されるのだと解釈します。

 

ただし、分ける割合は、相続法が優先されて、民法427条に定める単純な人数割りではなく、法定相続割合ということになります。

 

3 相続人と相続割合


では、具体的にはどのような割合で損害賠償請求権が分割されるのかですが、まず、①相続人は誰かを考えた上で、次に②相続割合を考える必要があります。

 

① 相続人は誰か?


法定相続人(民法887条以下)は原則として以下のとおりです。
・配偶者(妻・夫)がいる場合は、配偶者は必ず相続人になります。
・その他の家族は配偶者とともに次の順に相続人となります。
① 子供(子供が先に死亡している場合は孫)
② ①がいない場合は直系尊属(両親、両親が先に死亡していて祖父母がいる場合は祖父母)
③ ①と②がいない場合は兄弟姉妹

 

② 相続割合は?


具体的な相続分は、以下のとおりとなります。
・配偶者と子が相続人の場合、配偶者2分の1、子2分の1
・配偶者と直系尊属 配偶者3分の2、直系尊属3分の1
・配偶者と兄弟姉妹、配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
*立場が同じ相続人が複数いる場合は上記割合を頭割り

 

4 具体的に考えてみましょう。


被害者Aさんが亡くなって、Aさんの家族としては妻のBさん、長男Cさん、次男Dさん、お父さんのEさんがいたとします。
Aさんの損害額を計算すると8000万円になりました。
相続について話し合いましたが話がまとまらないのでCさんは自分の損害賠償請求権だけを行使したいと思っています。

 

このような場合、妻Bさんは当然に相続人になります。
子供であるCさん、Dさんも相続人になります。
Eさんは、子供がいない場合にのみ相続人となるので、今回は相続人とはなりません。

 

そして、配偶者と子供の相続割合は、それぞれ2分の1ですから、Bさんは、8000万円の2分の1である4000万円の請求権があることになります。
子供であるCさん、Dさんは、2人で4000万円の請求権があることになります。
子供同士の相続割合は等しいので、Cさんは2000万円、Dさんは2000万円の請求権があることになります。

 

そうすると、Cさんは加害者に対し2000万円を他の相続人の許可なく請求する権利があるということになります。

 

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弁護士 本田幸則

弁護士 本田幸則

2007年に弁護士登録をし、2014年に「なごみ法律事務所」を設立。 自身が交通事故にあったことをきっかけに、交通事故の被害者側での弁護活動に注力するようになる。