交通事故の基礎知識

交通事故に関する法律から自動車の知識まで、交通事故にあってしまったら知っておきたいことを弁護士が分かりやすく説明します!

分野別の目次は、こちらの【コラム目次】をご覧ください

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追突事故の場合でも、原則10:0の過失割合がゼロにならない場合

前が渋滞していたためのろのろ運転をしていたら、後ろから追突された。

後ろの車の運転手は、「動いている車同士だから、そっちにも過失がある」と言っている。

本当にお互い動いている場合には過失はゼロにはならないのでしょうか?

 

いいえ違います。

追突事故では前を走っていた車両の過失割合は、原則としてゼロです。

ただし、事故状況によっては最大で50%程度の過失が認められることがあります。

もう少し詳しく説明しましょう。

 

【目次】

1 基本の過失割合

2 無意味な急ブレーキとまではいえない場合

3 後続車両がスピード違反の場合

4 先行車両のブレーキランプの故障など

5 住宅街や商店街での事故

6 幹線道路での事故

7 その他

 

1 基本の過失割合

まず、ここでいう追突事故とは、赤信号で停止していたり、渋滞で停止していたり、ノロノロ運転になっているところに後ろの車が突っ込んでくるなど、同一車線上の事故をいいます。

車線変更時に後ろから来た車両にぶつけられた場合などは、ここには含みません。

このような同一車線上の追突事故でよくある主張が、過失割合は70(後行車両):30(先行車両)だというものです。

そして、根拠としてあげられるのが「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という本の【154】番の図です。

しかし、この主張は間違っています。

この本は、裁判官が作成しているもので裁判においても参考にされるものですが、注意書きが多く、よく読まずに図だけ見ると全く違った結果となることがあります。

 

では、この本の追突に関する注意書きには何が書いてあるかというと、「基本的には被追突車Bには過失がな」いと記載され、「本基準は、被追突車Bが法24条に違反して理由のない急ブレーキをかけた場合を基本の事故態様として設定した」と書かれています。

法とは、道路交通法のことです。

ですから、追突事故の過失割合は、100:0が基本となり、意味もなく急ブレーキをかけた場合には70:30に修正されるということになります。

以下、3~7では過失割合の修正について説明しますが、いずれも先行車両が意味もなく急ブレーキを踏んだことを前提として、70:30からさらに修正される要素について説明します

 

2 無意味な急ブレーキとまではいえない場合


上記のとおり、意味のない急ブレーキは70:30の過失とされますが、もう一つ注目すべき注意書きがあります。

「被追突者Bに法24条違反に至らない程度のブレーキの不必要、不確実な操作等がある場合も、被追突者Bの過失を肯定してよい場合があると考えられるが、このような場合には過失相殺率を20%程度にとどめるのが相当である」という記載です。

 

「法24条違反に至らない程度のブレーキの不必要性」というのは分かりにくいですが、たとえば、急な飛び出しをイメージしてください。

10m先の見通しが悪い路地から子供が飛び出してくれば急ブレーキが必要ということに争いはないでしょう。

では、その飛び出しが100m先の場合はどうでしょう?

急な飛び出しでビックリするかもしれませんが、急ブレーキが必要だったかというと疑問があります。

そのような場合は、道路交通法24条に違反するとまではいえませんが、後続車両との関係では過剰な反応で危険を及ぼしているので、20%程度の過失が認められることがあります。

 

もっと分かりにくいのが「ブレーキの・・・不確実な操作」です。

道路交通法の解釈からすれば、たとえばブレーキとアクセルを繰り返すなどの場合がこれに当たりますが、現実的には、後続車両もこのような車がいれば近寄らないでしょうから、この規定に当たる事故というのはほとんどないのではないかと思います。

 

3 後続車両がスピード違反の場合


後続車両がスピード違反をしていた場合には、そのせいで事故の発生確率が上がりますから、後続車両の過失割合は上がることになります。

上記判例タイムズでは、後続車両が15km以上の速度違反をしていた場合は+10%、30km以上の速度違反をしたいた場合は20%、後続車両の過失が上乗せされます。

 

4 先行車両のブレーキランプの故障など


前を走っていた車両のブレーキランプが故障していた場合には、後続車両は先行車両のブレーキに気づくのが遅れますから、後続車両の過失割合が-10~20%とされます。

 

過失の認定に幅がある主な理由は、昼間と夜とで車体の視認性が異なるからです。

夜の方が車体の動きが見えづらく、ブレーキランプに頼る割合が増えるので、夜間の事故であれば-20%となりやすく、昼間の事故であれば-10%となりやすくなります。

また、過失割合を修正する理由が、ブレーキランプが見にくくて対応が遅れてしまうことですから、先行車両のテールライト部分がひどく汚れていて法定の照度に達していないような場合にも修正を受けます。

 

5 住宅街や商店街での事故


人通りの多い場所では、急ブレーキを踏む可能性が高いですから、後続車両もそれを予測した運転をすべきという理由で、後続車両の過失割合が+10%とされます。
上記のように人通りが多いことを理由とする修正ですから、住宅街や商店街でも深夜など人通りが少ない時間帯の場合は修正されません。

 

6 幹線道路での事故


幹線道路かどうかは、具体的な事情から判断されますが、おおよそ歩車道の区別があって、片側2車線以上あり、交通量が多い道路をいいます。

このような、車の交通量が多く、流れに乗って走るのが通常といえるような道路状況での事故の場合、後続車両は、先行車両がスムーズに進んで行くと信頼しており、急ブレーキへの対応が遅れがちであることから、後続車両の過失割合が-10%とされます。

 

7 その他


先行車両に著しい過失や重過失がある場合には、後続車両の過失が-10~20%となります。

冒頭に書いたとおり、もともとの過失割合70:30が、先行車両が意味もなく急ブレーキをかけたような場合を想定していることから、著しい過失とは、それ以上に危険な運転をいい、重過失とは故意に匹敵するような落ち度がある場合をいいます。

 

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弁護士 本田幸則

弁護士 本田幸則

2007年に弁護士登録をし、2014年に「なごみ法律事務所」を設立。 自身が交通事故にあったことをきっかけに、交通事故の被害者側での弁護活動に注力するようになる。